最近、自分を支配している感情があるとしたら?
アーティスト ありますよね、そういう感情って。何かを一生懸命やっているんだけど、長く続けているうちに、しっかり握っていたものが少し緩みそうになって、でもまた必死に掴み直そうとする気持ち。今は、その“粘り強さ”を手放さないようにしている時期です。ソロアルバムをほぼ1年間準備してきました。今は最後の段階ですが、ここで集中力が切れてしまうとアルバムの完成度に影響が出てしまうので、最後まで気を抜かないようにしています。そんな気持ちで過ごしています。
それだけ時間をかけたぶん、期待も大きくなるのでは?
アーティスト 今、一番の関心事ですね。二度と作ることのできない“最初のソロアルバム”なので、より特別な意味があります。すごく悩んで作ったアルバムなので、成功するかどうかよりも、ただ無事に世に出てくれたらいいなと思っています。もう僕にとっては、すでに愛おしいアルバムです。あとは、世間が愛してくれるかどうかは、もう僕の手を離れた問題ですね。
これまで多くのアルバムをリリースしてきましたが、やはりソロアルバムは特別ですね。最初から自分の声をたくさん入れようと意識しましたか?
アーティスト もちろん、自分の色をたくさん入れました。ほぼ自伝的なアルバムになったと思います。それだけ僕自身はもちろん、スタッフや作曲家の方々も、僕という存在をテーマにたくさんアイデアを出してくれました。ビジュアルから音楽まで、すべて僕を中心に考えて作られたアルバムです。
自伝的なアルバムとして、どんな雰囲気を込めましたか?
アーティスト 僕の人生をベースにアルバムを構成しました。個人的なストーリーや、成長する中で経験したことがたくさん詰まっています。
自分の人生を投影したアルバムなら、作る過程もすごく楽しかったのでは?
アーティスト いや、今はこうして話していますが、最初は方向性を決めるのが本当に難しかったです。最初は単に良い曲を集めたアルバムになりかけていました。でも、いろんなフィードバックを受けて方向性を変え、リリース日も調整しました。それが最高の決断でしたね。おかげで、僕自身にとっても特別なアルバムになったし、より一層愛着が湧くようになりました。
方向性を変えるときには、大きな決断が必要だったのでは?
アーティスト ものすごく大変でしたし、正直、途方に暮れました。ファンにはすでに「アルバムは2月に出る」と伝えられていたので、締め切りが決まっている中での変更は余計にプレッシャーがありました。でも、今振り返ってみると、それが逆にチャンスだったんですよね。
順調に進んでいたものを作り直すことに、反対はなかったですか?
アーティスト 最初は僕自身が、発売日を変えてまでアルバムの方向性を変えるのは避けたかったんです。でも、一緒に作業する人たちが率直なフィードバックをくれて、それを受け入れるまでに時間がかかりました。このすべての経験が、僕にとって大きな学びになりましたね。
周囲の意見を受け入れて考えを変えたんですね。それも簡単な決断ではなかったでしょう?
アーティスト 僕はこの分野について決して初心者ではないと思っていますが、それでも時々、自分の確信に囚われて視野が狭くなることがあります。幸いなことに、今回は周りの人たちがうまくバランスを取ってくれて、それを反映できました。本当に正しい選択でしたね。フィードバックを受け入れながら、「他の人の意見に耳を傾けてよかった」とどんどん確信するようになり、その方向性でより多くのことを進められるようになりました。
今回のアルバムは、ファンだけでなく、ファンではない人たちにもどんな魅力を感じさせると思いますか?
アーティスト このことについては、つい最近も考えました。このアルバムをみんなが好きにならなくてもいいし、ものすごく成功しなくてもいい。でも、一度くらいは最初から最後まで聴いてもらえたら嬉しいな、と。それくらいの気持ちになれるアルバムです。
成功よりも、ちゃんと聴いてもらうことを願うアルバムだなんて、ますます気になります。
アーティスト 本当にたくさんの思いを込めたアルバムで、僕自身についてのアルバムだから、できれば皆さんに一度は聴いてほしいです。これを最後まで聴いたら、きっと僕のことをもっと知ることができると思います。
自伝的なアルバムの話をしていたら、この旅の最初の瞬間が思い浮かびました。中学2年生のとき、グローバルオーディションに参加しましたよね。その時点で、目指すものが明確だったんですか?
アーティスト いや、全然明確じゃなかったです。どちらかというと、軽い気持ちでオーディションを受けました。K-POPアーティストになりたいという強い夢を抱いて参加したわけではなかったですね。むしろ、実の兄のほうがそういうオーディションをたくさん受けていました。兄についていって、SMのオーディションも受けましたよ。当時ちょうど学校が休みだったので。兄と家で楽しくK-POPのダンスを練習して、それを披露しに行っただけでした。でも、そうやって始まったことがどんどん進んでいくうちに、初めてステージへの夢が大きくなっていきました。
友達についていってオーディションを受けたら、自分だけが合格した…まさにスターの典型的な始まりですね。
アーティスト それでも、確かに“運命的な出会い”だったと思います(笑)。
オーディションに合格しても、夢を叶えるためには生活環境を大きく変えなければなりませんよね。それを受け入れるのも簡単な決断ではなかったのでは?
アーティスト そうですね。両親ともたくさん話し合いました。でも、ありがたいことに、両親はとても理解のある人で、僕のやりたいことは何でも応援してくれました。本当は、勉強をしっかりしてほしいという思いもあったようですが、それでも僕を信じて韓国に送り出してくれました。
SMのグローバルオーディションが、まさに人生の決定的な瞬間だったんですね。ここに至るまで、そんな決定的な瞬間が何度もあったのでは?
アーティスト さっき話した、アルバムの発売日を変更して方向性を変えたことも、大きな決断のひとつですね。『高校ラッパー』に出演したことも、大きな転機でした。あの頃は、目の前の仕事をこなすのに精一杯で、本当に大変でしたが、自分にとってはすごく意味のある経験になりました。もともと僕はラップにそれほど関心がなかったんですが、練習生時代にラップのレッスンを受けてヒップホップにハマった瞬間も、自分にとっては大きな出来事でした。初めてソロのシングルを出した瞬間も、初めてコンサートをした瞬間も、すべてが大切な節目でしたね。
決定的な瞬間が次々と駆け巡っていますね。そのとき、どんな気持ちになりましたか?
アーティスト 「人生は決まっているようで、決まっていないんだな」と思いました。確実に、あの頃の自分と今の自分を比べると、すごく成長したと感じます。自分自身についても、人生についても、以前よりもっとよく理解できるようになりました。
時間の経過だけでなく、経験してきた瞬間の積み重ねが大きな変化をもたらしたんですね。それでも変わらないものはありますか?
アーティスト 僕は少し時間がかかっても、着実に進んでいくタイプなんですが、その本質は変わっていません。もうキャリアは10年になりますが、今でも「もっと頑張りたい」という気持ちと欲がしっかり残っているんです。努力し続けたいという意志は、昔と変わらず持ち続けています。いちばん変わったのは、“気づき”ですね。自分のアイデンティティを知り、理解し、受け入れるまでに、結構時間がかかりました。
“アイデンティティ”とは?
アーティスト 音楽を創作すること自体、アイデンティティの問題でずっと悩んできました。自分でもまだ自分のことがよくわかっていないのに、常に内側から何かを表現しなければならなかったので。でも、時間が経ち、曲を作っていくうちに、どんなアーティストになりたいのか、どんなメッセージを伝えたいのかがわかってきました。以前は曖昧でしたが、それがはっきりしてくると気持ちが楽になりました。自分自身について深く理解し、自分の進む道を決められたような感覚があって、その変化はとても大きいですね。
大きな変化ですね。どんな点が明確になったのでしょうか?
アーティスト 例えば、“信念”を大切にしているんですが、自分自身を信じることを受け入れるまでに時間がかかりました。受け入れるというより、その信念を正しく理解するのが難しかったんです。でも今は、すべてがつながっていると感じます。僕のライフスタイルをはじめ、すべてが“信念”を軸に回っているんです。
その考えは音楽にも影響を与えていますか?
アーティスト もちろん、影響はあります。そういうメッセージを込めた音楽も作りたいですし、自分なりのやり方で表現しています。
はっきりと表現しなくても、雰囲気や言葉の端々に自然とにじみ出る部分もありますよね。ファンやリスナーがそれを共感してくれたら、とても嬉しいでしょうね。
アーティスト 実は、ファンの皆さんはもうとっくに気づいていると思います。きっと、僕よりもずっと前から知っていたんじゃないかな。
変わらないことのひとつとして、“努力”の話をされましたね。メンバーたちも、努力家として真っ先に名前を挙げていました。
アーティスト 練習生の頃に“努力する人”というイメージがメンバーの間で定着したんですよね。あの頃は、本当に練習以外にやることがありませんでしたし。それに、練習生時代は努力した分だけ目に見えて上達する時期でもありました。ダンスも韓国に来て初めて本格的に習ったんですが、ダンスに限らず、成長していく姿を一番近くで見ていたのがメンバーだったので、そう思ってくれているんだと思います。
そのときの努力と成長の経験が、今でも努力し続ける原動力になっていますか?
アーティスト そのときに学んだ“努力の大切さ”は、今も心に深く刻まれています。練習生のときに、「努力しないと実力は伸びない」と痛感しましたし、今も向上心があるからこそ、それを叶えるには努力が絶対に必要だとわかっています。ある意味、僕は常に努力を続けています。
ラップ、ダンス、歌、すべて高いレベルにありますよね。努力だけでそこまで到達できるものですか?
アーティスト 昔、トレーナーの方が言ってくれた言葉を今でも覚えています。「努力をすればするほど、才能も少しずつ現れることがある」って。その言葉がすごく心に響いたんです。すごく大変だったけど、「やればできるんだ」と気づきました。
何度も壁にぶつかってきたんですね?
アーティスト 曲を1つ作ること、歌詞を書くことも、僕にとっては本当に難しいことでした。ダンスを踊るときも、どうやってカッコよく見せるかがわからなかったし、最初は「自分には無理だ」と思って始めました。でも、ありがたいことに状況はうまく進みました。あと、“欲”というのは、人によって基準が違うと思うんです。細かい部分までこだわると、ちょっと冷めてしまうこともありますね(笑)。
自分だけが知っている“基準”ができると、なかなか満足できなくなりますよね。
アーティスト ある意味、終わりがないですね。僕は簡単には満足できないタイプです。でも、時間のかかり方が違うだけで、どんな形であれ常に努力し続けています。今回のソロアルバムが出たら、気持ち的には本当に少し休めると思います。このアルバムも僕にとっては壁の連続でした。リリースしたら、ようやく少しは肩の力を抜けるんじゃないかと思っています。
ある意味、“満足”というものは存在しないのかもしれませんね。
アーティスト 本当にそう思います。もう“もっと上手くなる”ということを超えて、自分ができることをより完璧に仕上げたいという気持ちが強くなっています。それが、僕にとっての“ネクスト”ですね。
それだけ努力してきたぶん、自分でも経験は積んできたと感じますか?
アーティスト 経験は確かに積んできました。でも、その経験を理由に油断するタイプではないです。今でも録音のときは緊張しますしね。たとえば、100個のことを成し遂げたとして、僕にとってはその100個すべてが難しかったんです。結果的には達成できましたが、簡単ではなかった。でも、人は結果しか見ないから、その過程の困難さは伝わらないんですよね。100個を達成したからといって、101個目を達成するときに簡単になるわけではありません。でも、その部分を知らない人が多いんです。知らなくて当然なんですけどね。だからこそ、僕は常に緊張感を持って取り組んでいます。
今、特に力を入れているのは、ダンスや歌の練習というより、方向性そのものなんですね。
アーティスト 今回のアルバムを作りながら、そういうことをよく考えました。僕というアーティストが自分の名前で出す初めてのアルバムなので、これを最後のアルバムにはしたくない。そう思いながら作っています。
ソロアルバムをリリースしたメンバーもいますよね。たくさん相談したり、アドバイスをもらったのでは?
アーティスト もちろんです。つい先日も、ドヨン兄さんとソロアルバムについて話しました。ドヨン兄さんには本当にたくさんフィードバックをもらいましたね。
K-POPスターとして大きな成功を収めましたが、ご自身ではどのように感じていますか?
アーティスト 実際に成功したほどには、あまり実感していません。K-POPシーンで“NCT”という名前を多くの人が知ってくれるようになって、僕という存在がどういうイメージなのかも何となくわかってきました。でも、“成功した”と感じたことはないですね。まだまだ先があると感じています。10年間この仕事を続けてきたからこそ、むしろそう思うようになりました。
最近、SMの30周年コンサートにも出演しましたね。他の公演とはまた違う特別な感覚があったのでは?
アーティスト そうですね。本当にたくさんの先輩・後輩が一堂に会して、一緒にステージを作り上げるのは、とても特別な経験でした。そして、来てくれたファンの方々の層も幅広かったので、それも楽しかったです。正直、自分がパフォーマンスするよりも、他のアーティストのステージを見る楽しみのほうが大きかったですね。久しぶりに他のアーティストのパフォーマンスを間近で観ることができて、すごく楽しかったです。どのアーティストも、僕が好きな先輩・後輩ばかりなので。30周年を迎えたということ自体が感慨深いですし、その30年のうちの10年を僕が共に過ごしてきたというのも、なんだか不思議な感じでした。
すでに多くのことを成し遂げていますが、今後の目標は何ですか?
アーティスト 直近の目標は、ソロアルバムをしっかり完成させて、無事にリリースすることですね。長期的には、NCT 127やNCT DREAMのメンバーとして、今年の活動を最後までしっかりやり遂げることです。
最後の質問です。あなたにとって、音楽とは何ですか?
アーティスト うーん…僕にとって、音楽は“複雑な関係”ですね。好きなようで、そうでもないような気もするし、なくても生きていけそうで、でもやっぱりないと生きられない気もする。ありがたい存在のようで、でも今は“ありがたい”だけでは表現しきれない部分もあります。でも、最終的にはやっぱり“感謝”ですね。音楽を通じて、こんなにも多くのことができるんだから、本当に感謝しています。結局のところ、クリエイターにとって最大の祝福は、創作物を通して何かを表現できること。嫌なことがあっても、幸せな瞬間があっても、それを形にして残せるというのは、本当に特別なことだと思います。